―――から、 天井から吊るした人形が音を立てたような気がして、リリララはゆっくりと目を開いた。 いつの間にやら、うたた寝をしてしまったらしい。 薄暗い部屋のなか、仄かに漂う焚き染めたヨモギの香り。おそらくそれのせいだろう。 だけどそれは同時に、ひとつの大きな予感をもたらしてくれた。 夢となり、彼女の元へと舞い降りてきた。 リリララは立ち上がった。 長い黒髪がさらりと流れ、右頬にある部族の印があらわになる。これは、誇りだ。そして、彼女の人生そのものでもあった。 突き刺すような強い視線の先には、外へとつながる扉。 背後で持ち霊であり、祖先である武人たちも何かを感じ取っているように身構えている。 ―――それは、きっとやってくる。 いつ何時、どんな姿で現れるのかはわからねど。 それは必ず、ここへくる。 或いはもう、すぐ近くまで来ているのかもしれない。 確かな予感をもって、リリララはじっと扉を見つめていた。 □■□ リゼルグが葉達の元を去り――― その穴を埋めるように、新たな仲間が一行に加わった。 「―――ちょっと待てよ。俺たちが見つけなきゃならないのは、パッチ村だぜ? セミノアなんて奴らじゃねえ」 「そのセミノアの戦士が、五百年前のシャーマンファイトに参加していてもか?」 怪訝そうなホロホロに、自信満々に胸を張っているのがその―――チョコラブだ。 情報が武器と豪語するだけあって、その量と質は確かのようだった。 ただひとつ―――難点を除いては。 「セミノアにはその時の伝承が残されてるってぇ話だ。…つまり、パッチ村の伝承が」 「そりゃすげえぞ!」 「フィギュアスケートぉ!」 ――――間髪入れず、ホロホロの、チョコラブを張り倒す音が響きわたった。 そんな徐々に見慣れた光景になりつつある彼らを、横目で見ながら蓮は小さく息を吐く。 「………」 リゼルグが突然いなくなって。 共に過ごした時間はそう短くはない。その証拠に、彼が去ったあとの空気ときたら、最悪とは言わないまでも決して心地の良いものではなかった。 各言う自分も―――少なからず、ぴりぴりしていたのだと思う。 勿論、一番入れ込んでいた竜の落ち込み様と言ったらなかった。 そして。 ――――くす 小さな、まるでため息のような控えめな笑い声が、蓮の隣から聞こえた。 そうっと盗み見ると―――微かに口許を綻ばせた、がいる。 まだ以前のような完全な笑顔ではない。どこか翳りはある。 それでも、ここまで笑えるようになったのだ。 ―――あの、リゼルグがいなくなった直後の憔悴ぶりからしたら、今の方が嘘のようだ。 その原因というか、きっかけを作ったのが―――目の前で笑えぬギャグを自信たっぷりに披露し、そのたびに殴り倒されている新しい仲間だとは、余り思いたくはない。思いたくはない、けれど―――。 (……笑えるように、なったのなら) 「……?」 が、蓮の視線に気づいた。 一瞬きょとんとしたようだったが―――すぐにまた、おずおずと微かな笑みを返してくる。 …嗚呼、それだけは。 ほんの少しだけだけれど、感謝、してもいい。 ―――不意にその時、道の向こうから複数の足音と悲鳴が聞こえた。 見覚えのある姿―――シャローナ達だった。 「お、ミリーちゃん!」 竜が嬉々として目を輝かせたが―――だが、彼女達の様子がおかしい。 皆が一様に顔を恐怖でひきつらせ、涙を浮かべながら必死に駆けていく。 まるで何かから逃げるように。 こんな快晴の穏やかな住宅路で、それは少々異様な光景だった。 「…知り合いか? リリララの家の方から逃げてきたみたいだが」 ホロホロに殴られ、もはや別人のように顔を腫らしたチョコラブが、もごもごと言う。 リリララ。 どうやらそれが、この先に住む、五百年前のシャーマンファイトに参加したとされるセミノア族の、末裔の名前らしい。 ―――ともあれ唯一の頼みの綱だったリゼルグのいない今、少しでもパッチ村に関する情報はひとつひとつ検討していくべきだった。情報も限られているが、時間だってそうないのだ。 それに、あの気の強いシャローナ達が慌てふためいて逃げていったその理由も気になる。 葉達がそこに向かうのは、必然といっても過言ではなかった。 「―――すいませーん、こんにちはー」 郊外にある、古びた洋館。 どこか薄気味悪い雰囲気に包まれた屋敷をものともせず、場違いなほどいつも通りな葉の声が響き渡る。 だが返事はない。屋敷の中で人の動く気配もない。 静かすぎた。 日の高い、今のこの時間にしては。 「…?」 葉の様子に呆れていると、ふと蓮は手元に何かの気配を感じた。 隣に目を移すと、この場の空気に呑まれたらしい緊張気味な面持ちのが、視線を目の前の館に固定したまま、蓮の袖を握っていた。 こくり、とその小さな喉が動く。 (………) 少しだけ、照れ臭い。けれど頼られていることが、うれしかった。 大丈夫だ。その気持ちを込めて、彼女の手にそっと触れた。 ぴくりとが震え、驚いたような視線をよこし―――けれど蓮と目が合って、強張った顔をわずかに緩めた。 だいじょうぶ。大丈夫だ。 自分にも言い聞かせるよう、そう再度念じる。 何があっても、前へ進まねばならないのだから。 そう。 たとえ何があっても。 しばらく葉の呼びかけだけがむなしく響き渡る。 留守なのだろうか―――そう誰もが思い始めた、その時。 葉の手からノッカーが離れ、洋館の扉がひとりでに開いた。 その重苦しい音に、一気にその場に緊張が走った。 誰かの息を呑む小さな音。 全員の視線が、自然と開いた扉の奥へと集中する。 漂う空気と同じく、中もまた薄暗かった。 けれど少し違うのは―――突き当りの壁際で、一人の女がベッドに腰掛けていること。 ほとんど気配もなかった。 なのに扉一枚の向こうにいた。 その事実に誰もが動けもせず、立ち尽くしていると―――女は静かに立ち上がり、昏い炎を湛えた双眸で告げた。 重々しく、けれど確かな強さをもって。 「シャーマンファイトの選手たちよ―――いますぐ故郷に帰るが良い」 □■□ ――――――違う。彼らもまた、『しるし』ではない。 玄関で立ち尽くす少年達の姿を見て、リリララは胸の内で呟いた。 意志の強そうな顔ぶれ。きっと彼らも、パッチ族から見出された、才あるシャーマンたちなのだろう。 けれどそれだけだ。 リリララが待っているものではない。数日前、降りてきたヴィジョンの正体ではない。 ―――ひとり、一目でシャーマンではないとわかる少女が何故か混ざってはいたが、彼女の気にするところではなかった。 この屋敷には、昼夜問わず、引っ切り無しにシャーマンファイトの選手たちが訪れる。 それもリリララ自身が流した情報のせいだ。 自分の一族の持つ、パッチ村の情報。五百年前の伝承。 情報が少ない選手たちは、こぞってその手掛かりを求めてやってくる。 ―――彼女の技によって、五百年前のあの忌まわしい記憶を体験させられるとも知らずに。 きっとこの少年たちも、やがては恐れおののいて立ち去るだろう。先ほど訪れた、女性ばかりの集団と同じように。 (―――けれど、それで、いい) パッチの野望を阻止するためならば。 なにも若い命たちを、その才能を無駄に散らせることはない。 そう、そのために今自分はここにいるのだから。 「パッチに誘われてシャーマンファイトに参加した者達よ。…彼らを信じてはならない」 「……何故だ」 一番目つきの鋭い少年が低く問う。 「再び、過ちを行おうとしているからだ」 過ち。―――自身も何度も繰り返し見せられた、記憶。 物心ついたころから、この時のために、何度も何度も。 それはすべて、五百年前のシャーマンファイトで散華した、先人達の無念のためだ。 夢や希望を持った若者を弄び、翻弄した残酷な光景を、リリララは一生背負い、次の世代へ繋げていかねばならなかった。そう、教えこまれてきた。 二度とあの悲劇を繰り返さぬために。 五百年前のあの日から―――彼女の一族の運命は、決まってしまった。 「五百年前のシャーマンファイトで、彼らは惨劇を引き起こした。それなのに、今再びシャーマンファイトを開催しようというのは、正気の沙汰ではない」 「そんなこと言われてもよォ」 「その惨劇って、何があったんだ?」 嗚呼、やはり。 恐れ知らずな少年たちは引かない。その強い意志は二の足を踏むこともせず、己の道を進もうとしている。 ―――それが、意図的に敷かれたレールの上とも知らずに。 リリララは、杖を構えた。 …いいだろう。 知りたくば、教えてやろう。 その信じた道が、示された方向が、いったい何に繋がっているのかを。 同時に、五百年前の惨劇を。無念を。絶望を。―――痛みを。 「試してみるがいい!」 振るった杖に応え、木彫りの人形が霊の力を宿して、少年たちに一挙に襲いかかった。 飛びかかった人形の一つを、蓮が蹴り飛ばす。 「くだらん。人形を使ったオーバーソウルなど、虚仮威しもいいところ―――」 「っ、蓮!」 が叫ぶのと、その人形が動くのが同時だった。 「ぐああああ!」 一拍遅れて、蓮の悲鳴が木霊する。 人形の予期せぬ攻撃によって、彼の足が―――吹き飛んでいた。 ひゅっと悲鳴のような音をたて、喉の奥が窄まるのをは感じた。 「蓮…!」 「ッ…ぐ、来るな、馬鹿!」 は倒れこんだ蓮のもとへと駆け寄る。 来るなと言われて、止まれる訳がなかった。 目の前の出来事に―――頭の中が真っ白になる。 「…ちっ」 呆然としていると、激痛に顔を歪めた蓮に、ぐいっと頭を抱え込まれた。 同時に、頭上を何かが通過していく気配。 ―――直後、背後の葉達からも次々と悲鳴があがった。 「みんなっ…」 足先からぞくぞくと気味の悪い痺れが立ち上ってくる。 今までだって何度も危機を乗り越えてきた。 その度にみんな強くなった。 なのに。 こんな、呆気なく。 「………落ち着け。」 けれどその空気を打ち破ったのは―――意外にも、蓮の低い声だった。 ははっと顔を上げる。 さっきまで激痛に顔を顰めていた彼の顔には、どこか怪訝そうな色が浮かんでいた。 「…よく見ろ」 促されるまま、蓮の足元、そして葉たちに視線を移す。 ………あ、れ。 「怪我…してない、の…?」 蓮の足はしっかり二本あったし、倒れこんだホロホロ達もその攻撃された箇所をさすってはいるものの、誰一人として血を流している者がいない。 全員が無傷だった。 あれ程までに―――大けがを負うような攻撃を受け、そしてその激痛に声を上げたのにも関わらず。 「それは我がセミノアの戦士が、かつてシャーマンファイトで受けた痛みの記憶。お前たちは、彼らが体験したその痛みをヴィジョンとして共有したのだ」 媒介の木彫り人形を従え、リリララと名乗った女性が告げる。 あの人形たちを通じて流れ込んでくる記憶。 そしてそこに憑依している―――セミノアの武人の霊達。 「…なるホロ。一瞬の憑りつきで、奴らの記憶が俺たちに入ってくるのか」 床に座り込んだまま、ホロホロが呟く。 霊達の、痛みの記憶。 それを追体験させるのが、リリララの言うセミノアの巫術らしい。 (……でも) いったい、五百年前に何があったというのだろう。 は溢れてくる不安に、ぎゅっと両手を握りしめる。 惨劇。 激痛。 悲鳴。 (……………………まさか) ふと浮かんできた考えに、は思わず息を呑み、口許に手をやった。 それはとてつもなく悪い考えだった。 霊たちの痛み―――それが、彼らの絶命するに至る、直接の原因になっているとするならば。 だからこその激痛。蓮の受けた攻撃の、あの一瞬を思い浮かべれば、それがどれだけ圧倒的で、なおかつ酷いものだったか想像に難くない。 ああでも、まさか。もしかするならば。 (……彼らは………あの霊たちは…………) ―――――誰かに、殺されてしまったということ? 一体誰に? …どうして? 「―――見せてくれ、リリララ」 「葉!」 「旦那…」 ゆっくりと立ち上がりながら、葉が言った。 まだ痛みの残る鳩尾を、庇いながら。 そうそれは、それだけ霊の記憶が鮮明だったということ。 だけれど葉は、驚くホロホロ達の視線を、笑って見返した。 「パッチが五百年前に何をしたか、気にならないか」 (葉…?) 眉を寄せたの隣で、ふん、と蓮が鼻で笑うのがわかった。 「面白い。俺は苦痛など、恐れはしない」 「………」 彼が言うなら、きっとそれは本心なのだろう。 でも。 の中で何かが燻っている。 悪い予感がするのだ。開けてはならない箱に、手をかけようとしている。 知らなければならないことなのに、きっとその筈だとわかるのに、何故か―――何かが、躊躇させる。 「蓮…」 「大丈夫だ。お前は離れていろ」 違う。不安なのは、直接的なその苦痛じゃない。でも―――何と言っていいのか、わからないのだ。 この焦燥感をなんと表現しよう。 この只ならぬ胸騒ぎを、なんと伝えよう。 その痛みの正体は、霊達の記憶は、確かに知らねばならぬことなのに。 目指すもののために、パッチ村への手掛かりを得るために、必要なことだとわかるのに。 (どうして…わたしはなにに、怯えているの) いったい、その先に待つのは何なのだろう。 けれどもやがて、唇をかみしめ、は言った。 得体のしれない何かに怯えて―――自分だけ尻込みするわけには、いかなかった。 「―――わたしも、しりたい」 「」 咎めるような蓮の声。 だけど譲れなかった。 皆が痛みを恐れず覗こうとしている、不安の先を。 自分だって知らねばならないことだから。 それは―――確かだから。 「……ならばお前は、私に触れていろ。かつてお前たちと同じように、あの記憶を追体験した私に、同調すれば良い」 リリララが手を差し伸べてくる。 はその手を、迷わず取った。―――後には引けない。引きたくない。 それは――― リゼルグを失って、けれど幾ばくもなく、新たな仲間と出逢って。 どっぷりと悲嘆に暮れる間もなく、次へ次へと状況が変化する中で、まざまざと思い知らされた真実だった。 パッチ村へ行かねばならない。 前へ進まねばならない。 たとえ何が待ち受けていても。 時間は、足を止めることを許さない。 それがチョコラブが齎してくれた、前向きな明るさ(きっと彼はそれを笑いの風と表するのだろう)と、そして何があっても決して揺らがない現実だった。 「……、…」 「…蓮。わたしも、だいじょうぶ…だから」 蓮は尚も納得のいかぬ様子でを見つめていたが、そこに浮かぶ決意の表情に、腹をくくったらしい。 「…わかった」と、やがてぽつりと答え頷いた。 「ふん…良い度胸だ。―――ならば見よ! 五百年前に起きた、あの忌まわしい惨劇を」 リリララが杖を振りかざし―――再びオーバーソウルした人形たちが、皆に飛びかかった。 ――――それは、夢から醒める感覚に似ていた。 真っ暗な視界になったと思ったら、すぐに強烈な眩しさを閉じた瞼の裏から感じて、はおそるおそる目を開ける。 灼熱の太陽の下、砂漠を歩く五人の男の姿が見えた。 (あれは―――) きっと彼らがセミノアの戦士たち。その、生前の姿だ。 ということは、これがリリララに同調した末、見ている記憶なのか。 蓮達も、あの五人の目を通して、今のこの光景を見ているのだろう。 (なんだか……鳥になった、みたい) セミノアの戦士たちそれぞれの目を通してしか把握出来ない蓮達に比べて、自分はまるで飛ぶ鳥のように彼ら全員を俯瞰している。 けれど、恐らくは蓮達と同じように、太陽の熱さや風の埃っぽさも感じている。…不思議な気分だった。 『そこは今から五百年前のラッキー山脈。お前たちは、セミノアの戦士たちの記憶の中にいるのだ』 リリララの声がどこからともなく響いてきた。 『彼らは今まさに、最期の決戦のため、己の死んだ場所へと歩んでいるのだ』 最期の――― 込み上げてくる緊張を、は思わずぐっと嚥下した。 落ち着いて。落ち着いて。 何があったのか、きちんと自分の目で見極めなければ。 かつてこのセミノアの戦士たちも、夢や希望を携え―――パッチに見出されて、シャーマンファイトへ参加したのだと言う。 シャーマンキングになって、己の描いた理想の世界をつくるために。 そう、今ここに居る葉達と、何ら変わらない思いで。 けれど。 『だが、戦士たちは恐るべき野望を持った男の存在を知ってしまう。それは―――優れたシャーマンのみがこの星に君臨するという、シャーマンキングダムの建設』 “シャーマンキングダム” その言葉が妙に胸をざらつかせた。 心臓が、大きく跳ねる。 (…なんだろう……なんで…?) それは後から考えれば、何かの予兆のような、虫の報せのようなものだったのかもしれない。 けれどそのときのに、そんなことわかるはずもなかった。ちりちりと意識の端っこが、警戒で疼く。 落ち着いて。落ち着かなければ。落ち着け。 だがいくら言い聞かせても、どんどん緊張は高まっていく。止められない。 心なしか、呼吸も少しずつ浅くなっていく。 ぎゅうっと見えない拳を握りしめた。 の異変に気付かず、リリララは続けた。 『その男は確かにそう言ったのだ。悪魔のような男だが。……見ろ、現れたぞ』 (ッ―――) 今度こそ。本当に。 息が、止まった。 セミノアの戦士たちの前に立ちはだかった―――青年の姿に。 それを捉えた瞬間、まるでその世界から弾き出されるようにして、の意識が現実に戻った。 薄暗い部屋。焚き染めた香。 リリララの部屋だ。 「お、お前…! 何故…!?」 リリララが、突如意識を戻したに、慌てている。 けれどには答えられなかった。そんな余裕は、なかった。 「ッ、は、う、っぁ…!」 がくがくと身体が痙攣している。 なのに指一本すらまともに動かせない。 呼吸もうまく出来なかった。酸素が足りず、視界が揺らいで、今自分が立っているのかもわからなくなる。 『どうして―――』 頭の中で、声が聞こえた。 聞き覚えのある声。 とても悲しくて―――絶望に引き裂かれてしまった、女の声。 (…だめ…!) 何かがあふれようとしている。自分の中から。意識の奥の奥、心の中の、ずうっと底の方から。 抑え込もうとしても、それは絶対的な強さを持って這い出ようとしている。 ―――抗えない。 「…れ、…っ」 助けを、呼んだ。 けれどそれが届く筈もなかった。 『どうして―――私達の子が、あの人を殺そうとしているの!?』 やがて、その声が鮮明に聞こえたのを最後に。 ぶつりとまるでテレビのスイッチを切るかの如く強制的に、容赦なく―――の視界は真っ暗になった。 |